中1の地理の世界地誌で学ぶ東南アジアの授業活動です
東南アジアは自然環境や農業を学習した後、地域の経済発展にも着目します
マレーシアやシンガポールはASEAN諸国の一員としてもニュースでよく見るようになりました
ブミプロトラ政策
ブミプトラ政策(Bumiputera Policy)は、マレーシア政府が、主に先住民であるブミプトラ(Bumiputera)と呼ばれるマレー系マレーシア人を優遇するために導入した政策です
ブミプトラ政策は、マレー系マレーシア人とそれ以外の人たちの歴史的な不平等や差別を解消し、異なる民族間での平等な発展を促す狙いがありました
例えば、マレー系の人たちに特別な助成金、ビジネス支援、雇用など、人々の経済的および社会的な地位を向上させる支援が明記されました
ブミプトラが教育、ビジネス、雇用の分野で競争力を強化し、国全体の盛り上がりに注目することが期待されていたのです
ただし、ブミプトラ政策には賛否があります
異なる民族間(例えば中国系の人たちとマレー系の人たち)の間で平等な機会を得られない部分もあり、
反感を持つ人たちもいたからです
マレーシアと中国系移民労働者
マレーシアには、19世紀にイギリスの植民地だった歴史があります
現地では欧米諸国向けの天然ゴムや錫(すず)の生産を行っていました
※錫(すず):缶詰の金属部分などに利用されています
採掘には労働力が必要だったため、中国からの移民労働者を数多く受け入れました
結果、現在では人口の約20%が中国系となっています(2018年、マレーシア統計局資料より)
中国系の人たちは教育熱心で、様々な分野で活躍しています
しかし、中国系の人とマレー系の人たちとの経済格差が増す中、
マレー系の住民が不利になる場面も増えました(例:中国系の企業では、社内公用語が中国語など)
こうした不利を改善するためのブミプトラ政策ですが、中国系の人にとって納得ができない部分も多くありました
例えば、事業の支援金です
マレー系の人には与えられるのに、中国系の人には与えられません

皆さんが中国系の人だったら納得できますか?
持続可能な発展にするためにも、バランスの取れた取り組みにする必要がありました
ブミプトラ政策の是非をめぐる討論
ここから、「自分が中国系の立場だったらマレー系の政策に賛成?反対?」というテーマで討論に入ります

生徒たちが自分の意見を形成しやすいよう、メリット・デメリットを教員側でまとめて伝えます
メリット
格差の解消
ブミプトラ政策は、(例えば中国系とマレー系の)歴史的な格差を解消し、マレー系住民の経済的な発展を促進する助けになります
例:マレー系住民に特別な助成金やビジネス支援を提供
国内企業の発展
ブミプトラ企業の育成と育成、国内企業の多様性と競争力が向上してマレーシア全体の経済発展に向けられます
デメリット
民族間の不平等が生じる
ブミプトラ政策がマレー系の特定民族に限られるため、他の民族グループと不平等が生じる可能性があります
移民を促進する可能性がある
不平等を感じる優秀な人材が他の国に移動する可能性が出てきてしまい、結果、国の衰退につながります
経済の不安定さが出てくる
特定の民族に対する政策が続くことで、経済の不安定が生じる可能性があります
投資家や企業は不確かな状況(例えば、優遇策がなくなる途端に企業の力が落ちるかもしれない)を嫌うため、
企業への投資や成長に悪い影響を及ぼす可能性があるのです
討論活動
ここまで説明したら討論に入ります
ブミプトラ政策はデメリットばかりでなくメリットがあることも含めて
「自分が中国系の立場だったらブミプトラ政策に賛成?反対?」と問いかけました
“国全体の発展”を考えれば、「賛成」になりますし
“一人一人を尊重する”観点だと「反対」意見になります
隣の生徒との話し合いで、生徒1人1人の考えを深掘りし最終的に意見をまとめてもらいます
生徒が自分で考えた内容は深く記憶に残ります
生徒のコメントをもとに次年度さらに良いものにできるよう振り返っていきます
コメント